【肩こりを「筋肉の硬さ」だけで考えない】― ひばり鍼灸整骨院・冨田が語る、施術の考え方 ―第一話

【肩こりを、どう見ているか】

― 私が施術の前に考えること ―

「肩がこるんです」

仕事の合間に肩を回す。首のつけ根を、自分で揉んでみる。それでも重さが残って、ついまた肩に手が伸びる。そんな経験のある方もいらっしゃるでしょう。

私が知りたいのは、その方が感じているつらさと、毎日の暮らしへの影響です。いつ気になるのか。どんなことを我慢しているのか。そこから、施術を考え始めます。

ひばり鍼灸整骨院の冨田です。                                    この連載では、日々の施術や勉強会で考えてきたことを、全8話にわたってお伝えします。

最初の題材は、肩こりです。今回はまず、なぜ肩こりからなのか、その経緯を少しお話しさせてください。

ひばり鍼灸整骨院は、保険適用の対象となる捻挫や打撲など、急性のけがへの対応を施術の柱としてきました。その基盤をさらに発展させようと始まったのが、慢性的な症状に対する自費施術の開発です。

長く続くつらさに悩む方の相談にも、もっと応えられる院にしていきたい。その方針のもと、私が研究と技術開発を任されました。

最初に対象としたのは、肩こりと腰痛でした。理由はシンプルです。相談や症例が多く、施術を求める方が多かったからです。

ただ、よく出会う症状でも、施術の理由を説明しようとすると、簡単には答えられない問いが出てきます。

肩に触れて「硬い」と感じた。その硬さと、患者さんが感じているつらさは、どう関係しているのか。そこに施術をするなら、何が変わることを期待するのか。

【「ここが硬い」と気づいてから、「この施術を選ぶ」と決めるまで。その間を、丁寧に考えたい】

この問いを掘り下げてきた記録が、勉強会の資料や日々のメモです。連載では、それらを整理しながら、私の施術の考え方を言葉にしていきます。

患者さんには、生活のことを伺ったり、首や肩を動かしていただいたりする理由を。スタッフには、検査や手技を選ぶときの考え方を。読み終えたあと、普段の施術が少し違って見えるような記事を目指します。

まずは、「肩がこる」という相談を受けたとき、私がどんなことに目を向けているのか、お話しします。

【第1節|肩こりで、どんなことに困っていますか】

「肩こりが楽になったら、何をしたいですか」

こう聞かれると、少し意外に感じるかもしれません。肩がつらいから相談しているのに、どうして生活のことまで聞くのだろう、と。

同じ「肩こり」でも、困っていることは一人ひとり違います。その違いを知るために、私は普段の過ごし方を伺います。

例えば、仕事中に何度も肩が気になって、集中が途切れてしまう。帰宅するとつらさが増して、家族との時間を楽しめない。好きだった手芸や読書を、最近は早めに切り上げている。こうした場面には、その方が取り戻したい日常があります。

「肩を楽にしたい」という言葉の先に、「仕事を落ち着いて終えたい」「好きなことを、もう少し続けたい」という願いがある。その願いも、施術を考えるうえで大事にしたいのです。

つらさの強さや場所、いつから続いているかは、もちろん伺います。加えて、どんな場面で気になるのか、何を控えるようになったのかも教えていただきたい。「いつものことだから」とやり過ごしている不便があれば、それも相談してよいことです。

うまく説明しようとしなくても大丈夫です。

「何となく重い」「痛いというより、だるい」「今日はそれほどでもないけれど、夕方がつらい」。どれも、その方にしか分からない大切な感覚です。私の予想に合わせて言い直していただく必要はありません。

話しながら、気になる場面を一緒に思い出していければ十分です。施術の途中や、帰宅してから気づいたことも、次の機会にお聞かせください。

【その方が、何に困り、何ができるようになりたいのか】

それが分かると、体を調べるときにも、注目したいことが見えてきます。患者さんの言葉は、施術の方向を考えるための出発点です。

【第2節|触れて感じた「硬さ」を、どう考えるか】

「肩の筋肉が硬いですね」

そう言われたことがある方もいるでしょう。私も、肩に触れて硬さを調べます。手で触れて体の状態を調べることを「触診」といいます。

例えば、肩を押したときに「そこが痛い」と言われたとします。そこで伺いたいのが、「いつも気になっている痛みと、似ていますか」ということです。

押されたときの痛みと、仕事中に感じる肩の重さ。ご本人に聞いてみると、違う感覚かもしれません。その違いも、施術を考えるための情報になります。

ここで分けておきたいのが、「硬さを感じた」という事実と、「その硬さがつらさの原因だ」という解釈です。触れた感触だけで、二つを結びつけることはできません。

首を動かしたときにも同じ場所がつらいのか。普段の作業ではどうなのか。話を聞き、動きを見ながら、その硬さがどんな意味を持つのかを考えます。

また、私自身が何を「硬い」と呼んでいるのかも、はっきりさせる必要があります。筋肉を押したときの抵抗なのか、関節を動かしたときの動きにくさなのか。同じ言葉でも、調べているものは違います。

触診の研究にも、参考になる報告があります。51人を対象に首の検査を調べた研究では、首の関節の評価で、痛みの反応を手がかりにする場合は、動きの感触だけで判断する場合よりも、検査者同士の判断が一致しやすい結果でした(文献1)。

これは、検査者の判断がどれくらいそろうかを調べた結果です。判断が一致することと、症状の原因を言い当てられることは別の話ですし、この関節の検査結果から、肩の筋肉の硬さの意味まで決めることもできません。

私がここから学びたいのは、触れる側の感覚に加えて、触れられている方の反応も丁寧に受け取る姿勢です。

【手で触れた感覚に、患者さんの言葉を重ねる】

どの姿勢で、どこに、どのように触れたのか。そして、ご本人はどう感じたのか。そこまで言葉にして残せれば、次に調べるときや、スタッフ同士で検討するときにも役立ちます。触れる技術を磨くほど、その手で分かったことをどう受け止めるかも、大切にしたいのです。

【第3節|首と肩を、動きの中で確かめる】

「ゆっくり、右を向いてみてください」

首の動きを見るとき、私が注目するのは、どこまで動くかと、その途中で何が起きるかです。

動き始めからつらいのか。最後のほうで引っかかる感じがするのか。痛みが出そうで、それ以上動かすのが怖いのか。同じところで動きを止めていても、理由は違うかもしれません。

無理に動かす必要はありません。動いた範囲と、そのときの感覚を一緒に教えていただくことで、次に何を調べるかが見えてきます。

腕を上げる場面では、肩のまわりだけでなく、肩甲骨や背骨の動きにも目を向けます。健康な人の動作を調べた研究でも、腕を上げるときに、上腕・肩甲骨・背骨が関わり合って動く様子が報告されています(文献2)。

例えば、腕を上げるときに肩が大きくすくむなら、その瞬間に首のつらさも出るのかを伺います。ただし、左右差や目立つ動きがあっても、それだけで「悪い動き」とは決めません。生活で困っていることと、その動きがどう関係しているかが大切です。

もう一つ、私が注目しているのが、首の筋肉の使い方です。

首の深いところには、頭長筋や頸長筋という筋肉があります。「深部頸屈筋」と呼ばれ、頭と首を支え、動きを調節する働きに関わります。

その働きを考えるための検査の一つが、CCFT(頭頸部屈曲テスト)です。少し難しい名前ですが、行うのは、仰向けで頭をつけたまま、小さくうなずく動きです。

首の後ろに置いた圧センサーを目安に、動きを段階的に調節します。その位置を保てるか、首の表面にある筋肉をどのように使っているかも見ます。小さな動きを調節する様子から、深い筋肉の働きを間接的に捉える方法です。特定の筋肉の強さを、そのまま測っているわけではありません(文献3)。

この検査に関連して、Fallaらは、慢性的な首の痛みがある10人と、痛みのない10人を比較しました。筋肉が働くときの電気信号を測ると、検査の段階が進んだ課題で、首に痛みがある人たちの深部頸屈筋の活動が低いという結果でした(文献4)。

この報告は、私が筋肉の使い方にも目を向ける理由の一つです。一方、少人数で、首の痛みと特定の課題中の筋活動との関係を調べた研究です。「肩こりの原因は、この筋肉だ」と結論づけることはできません。

【検査は、その方への施術を考えるために選びます】

全員に同じ検査を一通り行う必要はありません。「振り向くとつらい」「腕を上げ続けると重くなる」といった困りごとに応じて、必要な動きを見ていきます。

首の動き、肩甲骨や体幹との関係、筋肉の使い方。その組み合わせから、どこに働きかけるかを考える。これが、私が動きを調べる目的です。

【第4節|同じ「肩こり」でも、確かめたいことは変わる】

ここまでの話を、三つの場面に当てはめてみます。以下は、考え方を説明するための架空の例です。

【パソコン作業で、午後から肩が重くなる方】

まず聞きたいのは、どんな作業を、どのくらい続けると気になるのか。途中で休んだときや、仕事のない日にはどうなのか、ということです。

作業中の姿勢を再現していただければ、腕をどこで支えているか、画面をどんな位置で見ているかも分かります。例えば、腕の支え方を変えて楽に感じるなら、その条件を仕事中にも取り入れられるか検討できます。

その場で楽だった工夫が、実際の仕事でも役立つか。次はそこを伺います。見た目の姿勢から原因を決めるのではなく、条件を変えたときの反応を手がかりに進めます。

【右を振り向くと、首から肩がつらい方】

この場合は、いつから始まったのか、きっかけがあったのかを聞いたうえで、無理のない範囲で左右を向いていただきます。

どのあたりまで動くか。途中のどこで、どんなつらさが出るか。それは、普段困っている感覚と同じか。動きと症状の関係を絞っていきます。

「右を向く」という動作は、施術後にも比べたい項目になります。振り向きやすさが変わったかを、ご本人の感覚と合わせて見ていきます。

【高い棚に物を置くと、肩まわりがつらい方】

腕を上げる途中につらいのか。上げたまま支えているとつらくなるのか。何も持たずに動かすときと、物を持ったときで違うのか。まず、困る場面を具体的にします。

そのうえで、肩や肩甲骨、体幹の動きを見ます。腕を一度上げただけでは分からないこともあるため、負担に配慮しながら、普段の作業に近い条件を考えます。つらさを無理に再現していただく必要はありません。

三つの例に共通するのは、最初に聞いた話によって、次に調べることが変わる点です。同じ「肩こり」でも、一人ひとりに合わせて進め方を組み立てます。

もちろん、その前提には、施術を進めてよい状態かという判断があります。しびれに加えて、ボタンをかけにくい、歩きにくいといった変化がある場合は、首の神経の障害なども考慮し、医療機関での確認を優先します(文献5)。

【第5節|施術で何を目指し、何をもって変化とするか】

「少し楽になりました」

そう言っていただければ、私もうれしいものです。そこでさらに伺いたいのが、何が楽になって、何がまだ気になっているか、ということです。

その話をしやすくするために、施術の前に目標を相談します。「振り向くときのつらさを減らしたい」「仕事の途中で肩を気にする回数を減らしたい」。ご本人が望むことを、なるべく具体的にしておきます。

変化を捉える方法の一つに、患者さん自身が困っている動作を選び、その行いやすさを数字で表す「PSFS」という評価法があります。日本語版も、首に痛みがある方を対象に、繰り返し測ったときの安定性や、変化を捉えられるかが検証されています(文献6)。

こうした方法も参考にしながら、ご本人が大切にしている動作を比べたい。数字に加えて、「どの場面で、どう違ったか」という言葉も残せれば、経過を振り返りやすくなります。

比べるときは、できるだけ同じ条件にします。施術前は立って振り向いたのに、施術後は座って比べていたら、何による違いなのか分かりにくくなるからです。

そして、施術直後に分かることと、日常に戻って初めて分かることがあります。

その場で首が動かしやすくなったとして、翌日の仕事ではどうだったのか。楽に感じる時間は続いたのか。気になっていた作業を、以前より続けられたのか。そこまで伺って、施術の結果を受け止めます。

つらさの強さが同じでも、仕事に集中できる時間が延びたなら、その方にとっては前進かもしれません。反対に、直後は楽でも、帰宅後につらさが増えたなら、施術の方法や刺激の量を見直す必要があります。

また、一度楽になったことから、症状の原因や、施術が働いた仕組みまで分かったとは言えません。変化が続くかどうかも、その後の経過を見て判断します。

【「変わらない」「前よりつらい」も、遠慮なく教えてください】

期待した変化がなければ、私の最初の見立てや、施術の選び方から振り返ります。必要に応じて医療機関での確認も含め、方針を考え直します。率直に伝えていただくことが、次の判断につながります。

【第6節|知識と技術を学び続ける理由】

なぜ、その動きを調べるのか。なぜ、その施術を選ぶのか。

ここまで書いてきたことを、患者さんにもスタッフにも、自分の言葉で説明できるようになりたい。そのために、私は知識と技術を学び続けています。

例えば、筋肉について学ぶとき。名前や位置を覚えたら、次は、どのような動きに関わるのか、働きをどう調べるのかを学びます。さらに、その検査でどこまで分かるのかを理解して、ようやく施術の判断に使えるようになります。

論文を読むときも、「効果があった」という結論だけでは足りません。どんな人に、何を行い、どのくらいの期間で、何が変わったのか。目の前の患者さんにも当てはまりそうか。使える知識にするには、そこまで読む必要があります。

手技の練習では、触れる位置、力の方向、刺激の量を調整します。同時に、その操作で何を目指しているのかを言葉にします。目的がはっきりすれば、患者さんのどんな反応を見て、何を調整すればよいかも考えやすくなります。

ひばり鍼灸整骨院では、月例の勉強会を行っています。 私がその場で伝えたいのは、手の当て方や動かし方と、そこに至るまでの考え方です。

「この検査で何を知りたかったのか」「この結果なら、次は何をするのか」。スタッフにも、疑問を遠慮なく出してほしい。説明しようとして、私自身の理解の曖昧さに気づくこともあるはずです。そのときは資料に戻り、調べ直します。

経験を振り返るときも同じです。うまくいった施術では、何を見て、どう判断したのか。思うようにいかなかったときは、どこを見直せるのか。言葉にしておけば、ほかのスタッフと検討でき、次の施術にも持ち込めます。

【学んだことを、患者さんへの説明と、施術を行う手にまでつなげる】

新しい知識に出会えば、自分の説明や判断を更新する必要も出てきます。これまでのやり方を振り返り、よりよい方法を探す。その手間を惜しまず、院全体で続けていきたい。

患者さんが安心して相談でき、自分の体や施術について納得できる。そうした関わりを支える力として、知識と技術を育てていきます。

【結び|学び続ける。それが、ひばりの強みです】

肩こりという身近な相談にも、耳を傾けたいこと、調べたいこと、考えたいことが数多くあります。今回、その一部をお伝えしてきました。

生活のことを聞く理由や、触れたあとに動きも見る理由が、少し身近に感じられたならうれしく思います。施術の中で疑問に感じたことも、どうぞお聞かせください。そのやり取りも、体のことを一緒に考える時間になります。

ひばり鍼灸整骨院は、知識と技術の習得、そして施術の開発に力を注ぐ治療院です。

【学び、技術を磨き、施術をより良くし続けること。それが、私たちのアイデンティティの一つです】

学んだことを、患者さんに伝わる説明にする。練習した技術を、一人ひとりの状態に合わせて使う。私も研究と技術開発を担う立場として、得られた知識や考えをスタッフへ伝え、相模原院・矢部院の施術につなげていきます。

次回は「手で触れるとき、何を確かめているのか」。関節と徒手療法を題材に、もう少し掘り下げてお話しします。

肩こりや体の不調でお困りの方は、相模原院・矢部院へご相談ください。まずは、毎日のどんな場面で困っているのか、お聞かせください。

【本文で紹介した文献】

文献1|首の検査における検査者間の一致度

Hariharan KV, et al. Inter-examinerreliability study of physical examination procedures to assess the cervical spine. Chiropractic & Manual Therapies. 2021;29:20.
論文情報(PubMed)

文献2|腕を上げるときの肩甲骨と背骨の動き

Crosbie J, et al. Scapulohumeral rhythm and associated spinal motion. Clinical Biomechanics. 2008;23(2):184–192.
論文情報(PubMed)

文献3|CCFTによる深部頸屈筋の臨床評価

Jull GA, et al. Clinical assessment of the deep cervical flexor muscles: the craniocervical flexion test. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2008;31(7):525–533.
論文情報(PubMed)

文献4|慢性的な首の痛みとCCFT中の筋活動

Falla DL, et al. Patients with neck pain demonstrate reduced electromyographic activity of the deep cervical flexor muscles during performance of the craniocervical flexion test. Spine. 2004;29(19):2108–2114.
論文情報(PubMed)

文献5|しびれや手先・歩行の変化について

日本整形外科学会「頚椎症性脊髄症」
日本整形外科学会の解説

文献6|日本語版PSFSの信頼性・妥当性・反応性

Nakamaru K, et al. Reliability, validity, and responsiveness of the Japanese version of the Patient-Specific Functional Scale in patients with neck pain. European Spine Journal. 2015;24(12):2816–2820.
論文情報(PubMed)

【ひばり鍼灸整骨院 相模原院】

住所:〒252-0216
神奈川県相模原市中央区清新1-6-1 ドゥセゾン1階

アクセス:JR横浜線 相模原駅南口から徒歩7分

電話:042-810-0393

駐車場:あり。

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【矢部駅前ひばり鍼灸整骨院 矢部院】

住所:〒252-0232
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アクセス:JR横浜線 矢部駅南口から徒歩1分

電話:042-707-8925

駐車場:専用駐車区画・提携コインパーキングあり。

公式サイト・ご予約案内

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