神経の炎症とは、神経細胞やその周辺の組織において様々な原因によって生じる炎症反応のことを指します。
神経の炎症は、多くの疾患の原因となることがあります。本稿では、神経の炎症のメカニズムについて解説します。

神経の炎症のメカニズムには、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

・炎症性サイトカインの産生

・細胞内シグナル伝達経路の活性化

・神経線維の損傷

炎症性サイトカインの産生
神経の炎症の原因として最もよく知られているのが、炎症性サイトカインの産生です。
サイトカインとは細胞間で情報を伝達するためのタンパク質のことで
炎症性サイトカインは免疫細胞や神経細胞から分泌されるタンパク質のことです。
主な炎症性サイトカインには、インターロイキン(IL)-1、IL-6、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターフェロン(IFN)-γなどがあります。

これらの炎症性サイトカインは、神経細胞やその周辺の組織において、炎症反応を引き起こすことがあります。
例えば、IL-1やTNF-αは、神経細胞に対して直接作用し、神経細胞の活性を亢進させることが知られています。
また、IFN-γは、神経線維や神経軸索の障害を引き起こすことがあると報告されています。

細胞内シグナル伝達経路の活性化
神経の炎症には、細胞内シグナル伝達経路の活性化が関与していることがあります。
細胞内シグナル伝達経路とは細胞内での情報伝達を担う分子機構のことで
細胞内の受容体に外部からの刺激が結合
神経の炎症が起こると神経組織を構成する細胞が活性化し炎症部位に移動してきます。
この過程で、免疫細胞であるマクロファージやT細胞が炎症部位に集まり炎症に対する免疫反応を起こします。

また、神経組織にはマイエリンと呼ばれる脂質の膜が巻かれており
神経信号の伝達を助ける役割を担っています。
神経炎症では、マイエリンが破壊されたり、神経細胞そのものが損傷を受けたりすることがあります。
これによって、神経伝達が妨げられ、痛みや麻痺、感覚障害などの症状が現れることがあります。

さらに、神経炎症が慢性化すると神経細胞自体が変性してしまうことがあります。
これは神経細胞の死滅につながり組織や器官の機能低下、あるいは機能喪失に至ることがあります。

炎症は本来、体内の異物や病原体を排除するために必要な反応ですが
神経の炎症は神経組織自体が損傷を受けるため治療が難しい疾患とされています。
しかし、最近の研究では、神経炎症を抑制するための新しい治療法の開発が進んでおり
将来的には治療の可能性が広がることが期待されています。